
日本は四季折々に美味しい旬の果物が実り、独特の香りや甘味で私たちの食生活を豊かにしてくれます。
果物はただ美味しいだけでなく、身体の調子を整えるビタミンや、ナトリウムの排泄を促すカリウム、お腹の調子を整える食物繊維が豊富に含まれています。
昔から「1日1個のリンゴは医者いらず」「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあるほど、健康維持に欠かせない食品です。
さらに、最近の研究では、果物が心臓病や高血糖、肥満を予防する可能性があるともいわれ、世界中でその健康効果が注目されています。
果物の過剰摂取による中性脂肪の増加と肥満の可能性
果物は健康的な食品ですが、食べすぎることで思わぬ影響を及ぼすことがあります。
ここで、筆者が経験した食事カウンセリングの事例をご紹介します。
クライアントのAさんは、「減量したいからお菓子をやめて果物を食べるようにしているのに体重が変わらない!」と相談されました。
【ある日のAさんの食事内容】
朝食:食パン、コーヒー、ヨーグルト、サラダ、目玉焼き
10時のおやつ:みかん2個、バナナ1本
昼食:ごはん、唐揚げ、サラダ、味噌汁
昼食後:りんご1個
3時のおやつ:柿2個
夕食:焼き魚、煮物、お浸し、漬物
夕食後:みかん1個、柿1個
Aさんに「たくさん果物を召し上がっていますね?」と聞くと、
「健康のために果物はたくさん食べるようにしています。栄養満点で砂糖も使われていないからおやつ代わりにしているんです。」と自信満々に答えられました。
なぜ、Aさんは減量に成功しなかったのでしょうか。
身体に嬉しい効果がいっぱいの果物ですが、ビタミンやミネラルの他に、果糖(フルクトース)やブドウ糖(グルコース)を多く含んでいるため、食べすぎた場合は肝臓で中性脂肪に合成され、脂肪の状態で貯蔵されます。2)3)
Aさんが減量に成功しなかったのは、果糖やブドウ糖の摂りすぎが原因でした。
そのため、健康のために食べていた果物が、逆に体重増加を引き起こす可能性があるのです。
では、果物は1日どのくらい食べればよいのでしょうか?
【日本人の食事摂取基準(2020年)】によると、1日に必要な栄養素を満たすために、200g~300gの果物を摂取することが推奨されています。
【主治医から食事制限の指示がない場合の目安】
- みかん:2個
- りんご:1個
- いちご:10~15粒
ただし、フルーツジュースは糖分が多く、加工の際に食物繊維が取り除かれることもありますので、フレッシュな旬の果物を摂取すると良いでしょう。
※毎日くだもの200g推進全国協議会 作成「FACT BOOK」より引用
また、農林水産省が提唱している【食事バランスガイド】では、食事では補えないビタミンCやカリウムなどの供給源として果物の摂取が推奨されています。
果物は食事だけでは補えない栄養を補給できる大切な食品です。
適正量を知り、上手に食事に取り入れましょう。
果物の栄養を最大限に活かす食べ方とは?
1日の摂取量を守りながら、複数の果物を組み合わせることで、様々な栄養素を取り入れることができます。
それらの栄養素が体内で働くことで、体の調子を整えるなどの効果を期待できます。
例えば、果物+ヨーグルトの組み合わせは、
果物に含まれる食物繊維と、乳酸菌が豊富なヨーグルトを一緒に食べるとことで、腸内で良い働きをする善玉菌が増えたという報告もあります。4)
果物だけでは摂取しづらいカルシウムやたんぱく質も補えるので、おやつの代わりに食べるのもオススメです。
果物を上手に取り入れて健康的な生活を
皆さんいかがでしたか?
日本人は諸外国と比較し、全体的に果物の摂取量は少ない傾向にあります。
果物の適正量を知り、バランスの良い食事で毎日健康に過ごしましょう。
参考文書
1) Ahmadi-Abhari, S., Luben, R. N., Powell, N., Bhaniani, A., Chowdhury, R., Wareham, N. J., ... & Khaw, K. T. (2014). Dietary intake of carbohydrates and risk of type 2 diabetes: The European Prospective Investigation into Cancer-Norfolk study. British journal of nutrition, 111(2), 342-352.
2) 公益財団法人 中央果実協会 果物が好き!になるパンフレット 資料編
3) Stanhope, K. L. (2016). Sugar consumption, metabolic disease and obesity: The state of the controversy. Critical reviews in clinical laboratory sciences, 53(1), 52-67.
4) Yang, J., Martínez, I., Walter, J., Keshavarzian, A., & Rose, D. J. (2013). In vitro characterization of the impact of selected dietary fibers on fecal microbiota composition and short chain fatty acid production. Anaerobe, 23, 74-81.