
基準費用額の見直しが施設の収支にどう影響するか把握できていますか
「基準費用額が見直されたと聞いたが、施設の食費収入にどう関係するのかわからない」「食材費が上がり続けており、食費の範囲内で食事を提供するのが難しくなっている」と感じている施設長や事務長、厨房責任者の方も多いのではないでしょうか。
基準費用額は、介護保険施設の食費と居住費の目安となる国の基準で、施設における食事提供のコスト管理とも深く関わっています。
本記事では、基準費用額の意味と、令和6年度(2024年度)改定とその後の見直しを含めた現在の金額を整理したうえで、施設の食材費管理の進め方を解説します。
なお、制度に関する内容は2026年10月時点で確認できる厚生労働省の資料をもとにしています。
実際の運用にあたっては、最新の通知と所管の自治体の資料を必ずご確認ください。
基準費用額とは
基準費用額の意味
基準費用額とは、介護保険施設などの食費と居住費について、国が定めている標準的な費用の額のことです。
厚生労働省の資料では、補足給付において、基準費用額と負担限度額との差額を介護保険から給付する仕組みが示されています。
補足給付・負担限度額との関係
所得や資産が一定以下の入居者は、市町村から負担限度額の認定を受けることで、食費と居住費の支払いを負担限度額までにできます。
この仕組みを補足給付(特定入所者介護サービス費)といい、基準費用額と負担限度額との差額が介護保険から給付されます。
基準費用額は、補足給付を計算する際の基礎となる金額といえます。
基準費用額が適用されるサービス
補足給付の対象となるのは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院といった介護保険施設と、ショートステイ(短期入所)です。
食費・居住費の基準費用額
令和6年度(2024年度)改定での見直し
厚生労働省の資料によると、令和6年(2024年)8月から、居住費の基準費用額が1日あたり60円引き上げられました。
たとえば、特別養護老人ホームなどの多床室は855円から915円に、従来型個室は1,171円から1,231円に見直されています。
見直しの理由としては、近年の高齢者世帯の光熱・水道費などや、在宅で生活する人との公平性などを総合的に考慮したことが示されています。
一方、この時点では、食費の基準費用額は1日1,445円で据え置かれました。
また、負担限度額が0円とされている利用者負担第1段階の多床室利用者については、負担限度額が据え置かれています。
令和8年(2026年)8月の食費の見直し
その後、厚生労働省の令和8年度介護報酬改定の資料によると、令和8年(2026年)8月1日から、食費の基準費用額が1日あたり1,445円から1,545円へと、100円引き上げられました。
あわせて、負担限度額は第1段階と第2段階が据え置かれ、第3段階①が680円、第3段階②が1,420円に見直されています。
現在の金額一覧
2026年10月時点で確認できる主な基準費用額(1日あたり)は、次のとおりです。
- 食費:1,545円(令和8年8月から)
- 居住費(特別養護老人ホームなどの多床室):915円
- 居住費(介護老人保健施設・介護医療院などの多床室):437円
- 居住費(特別養護老人ホームなどの従来型個室):1,231円
- 居住費(介護老人保健施設・介護医療院などの従来型個室):1,728円
- 居住費(ユニット型個室):2,066円
基準費用額と施設の食費の関係
1食あたりに換算すると
食費の基準費用額1,545円を1日3食で割ると、1,545÷3=515円となります。
補足給付の対象となる入居者については、この水準が、施設が受け取る食費の目安になると考えられます。
食費の中には人件費や光熱費も含まれる
施設の食費には、食材費だけでなく、調理員の人件費や光熱費、厨房設備にかかる費用なども関わってきます。
そのため、1食515円をすべて食材費に使えるわけではなく、食事の提供にかかる費用全体で収支を考える必要があります。
食材費や人件費が上がるなかで、基準費用額の範囲内で食事の質を保つには、計画的なコスト管理が欠かせません。
施設の食材費管理の進め方
1.1食あたりの原価を把握する
まずは、献立ごとに食材費を計算し、1食あたりの原価を把握します。
あわせて、調理員の人件費や光熱費を食数で割り、食事の提供にかかる費用の全体像をつかむことが大切です。
2.献立と発注量を標準化する
献立をサイクルメニューにして、使う食材や量を標準化すると、発注量を予測しやすくなり、まとめて仕入れることで価格を抑えやすくなる場合があります。
季節の食材を取り入れることも、価格を抑えながら献立に変化をつける工夫になります。
3.在庫と食品ロスを管理する
在庫の量や消費期限を定期的に確認し、使い切れずに廃棄する食材を減らします。
入居者の喫食率や残食量を記録し、作りすぎている料理がないかを見直すことも大切です。
4.食形態ごとの作り分けのコストを見える化する
ソフト食やミキサー食、療養食などの作り分けは、手間や食材のロスが増えやすく、見えにくいコストになりがちです。
食形態ごとの食数と作業時間を把握すると、どこに負担がかかっているかが見えてきます。
5.調理の方法も含めて総額で見直す
食材費だけを削ると、食事の質が下がり、入居者の満足度や喫食率の低下につながるおそれがあります。
食材費、人件費、光熱費、食品ロスを合わせた総額で、調理の方法そのものを見直すことが大切です。
完全調理済み食品を使った食材費管理
調理の方法を見直す選択肢のひとつが、完全調理済み冷凍食品の活用です。
1食あたりの費用があらかじめわかるため、原価を管理しやすく、必要な分だけ使えるため、食品ロスも抑えやすくなります。
また、施設での作業は温めと盛り付けが中心となるため、調理員の人件費や採用の負担を抑えやすくなると考えられます。
一方で、食品の購入費用や冷凍庫などの保管スペースが必要になるため、現在の食材費、人件費、光熱費、廃棄にかかるコストと比べて、総額で判断することが大切です。
導入前に試食をして、入居者に合う味や食形態かどうかを確認することもおすすめします。
よくある質問
Q.施設は基準費用額より高い食費を設定できますか?
施設が設定する食費の扱いは、補足給付の対象となる入居者かどうかなどによって、考え方が異なる場合があります。
食費の設定や入居者への説明の方法は、所管の自治体の資料でご確認ください。
Q.基準費用額はどのくらいの頻度で見直されますか?
基準費用額は、介護報酬の改定などにあわせて見直されることがあります。
直近では、令和6年(2024年)8月に居住費が、令和8年(2026年)8月に食費が見直されています。
最新の金額は、厚生労働省や市町村の資料でご確認ください。
まとめ
基準費用額とは、介護保険施設などの食費と居住費について国が定めている標準的な費用の額で、補足給付を計算する際の基礎となる金額です。
令和6年度(2024年度)改定では居住費が1日60円引き上げられ、令和8年(2026年)8月からは食費が1日1,545円に引き上げられました。
基準費用額の範囲内で食事の質を保つには、1食あたりの原価の把握、献立と発注の標準化、食品ロスの管理、調理の方法の見直しなど、総額でのコスト管理が欠かせません。
食材費や人件費を含めて食事提供のコストを見直したい施設は、完全調理済み食品の活用も選択肢のひとつです。
クックデリは、介護施設向けに完全調理済み冷凍食品を提供しています。
資料ダウンロードや無料試食会を通じて、導入後のイメージや費用をぜひご確認ください。
参考文献
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1280」(令和6年6月21日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001266890.pdf - 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第253回、令和8年1月16日)資料1「令和8年度介護報酬改定について」(那覇市 掲載資料)
https://www.city.naha.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/045/2026kaigohousyukaitei.pdf





