
嚥下食の段階や呼び方がばらばらでお悩みではありませんか
「病院から『コード3』と言われたけれど、施設のどの食事にあたるのかわからない」「職員によって嚥下食の仕上がりが違う」と感じている施設長や厨房責任者の方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
嚥下食は、飲み込む力が弱くなった入居者が、安全に口から食べ続けるための大切な食事です。
本記事では、嚥下食の意味と種類・段階を整理したうえで、高齢者施設で提供するときの注意点を解説します。
なお、基準や制度に関する内容は、2026年10月時点で確認できる学会や厚生労働省などの資料をもとにしています。
嚥下食とは
嚥下食の意味
嚥下食とは、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が低下した人でも安全に食べられるよう、形やかたさ、まとまりやすさなどを調整した食事のことです。
医療や介護の現場では「嚥下調整食」と呼ばれることも多く、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が段階ごとの分類を示しています。
嚥下食が必要になる背景
加齢による筋力の低下や、脳卒中などの病気の影響によって、飲み込む力が弱くなることがあると言われています。
飲み込む力が弱いまま通常の食事を続けていると、むせや誤嚥、窒息につながるおそれがあります。
そのため高齢者施設では、入居者の状態に合わせて嚥下食を用意し、口から食べる楽しみを支えることが求められます。
嚥下食の種類と段階
嚥下調整食分類2021の段階
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」では、嚥下食を主にコード0からコード4までの段階に分けています。
数字が小さいほど、飲み込む力が弱い人に向けた段階です。
コード0:嚥下訓練食品
均質で、付着性やかたさに配慮したゼリー(0j)や、とろみ水(0t)がこれにあたります。
主に、重い嚥下障害がある人の評価や訓練に用いられます。
コード1:ゼリー・プリン・ムース状
均質で、付着性やかたさ、離水に配慮した、ゼリー・プリン・ムース状の食事です(1j)。
コード2:ピューレ・ペースト状
ピューレやペースト、ミキサー食などのうち、べたつかず、まとまりやすいものです。
均質でなめらかなものは2-1、やや不均質なものは2-2に分かれます。
コード3:形はあるが押しつぶしが容易
形はあるものの、舌と上あごで押しつぶせる程度にやわらかく、口の中でばらけにくいよう配慮された食事です。
コード4:箸やスプーンで切れるやわらかさ
かたさやばらけやすさ、貼りつきやすさがなく、箸やスプーンで切れるやわらかさの食事です。
とろみの3段階
嚥下調整食分類2021では、飲み物などに付けるとろみを「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分けています。
さらさらした液体は飲み込むタイミングがずれやすいため、入居者の状態に合わせて、とろみの濃さを調整することが大切です。
施設でよく使われる呼び方との関係
高齢者施設では、きざみ食やソフト食、ミキサー食といった呼び方が使われることも多いと考えられます。
これらの呼び方は施設ごとに基準が異なるため、学会分類のどのコードにあたるのかを対応させておくことが重要です。
たとえば、ミキサー食はコード2、ソフト食はコード3やコード4に近い食事として扱われることが多いと考えられますが、実際の対応は施設の基準によって異なります。
高齢者施設で嚥下食を提供するときの注意点
1.食形態は多職種の評価で決める
嚥下食の段階は職員の印象だけで決めず、医師や歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの評価にもとづいて決めることが大切です。
退院時には、病院からの情報提供の内容を確認し、施設の食事にどう置き換えるかを検討します。
2.施設内の呼び方と基準を統一する
同じ「ソフト食」でも、職員によってかたさの基準が異なると、仕上がりにばらつきが出てしまいます。
学会分類のコードと対応させた施設内の基準表を作り、写真付きで共有すると、誰が作っても同じ仕上がりに近づけやすくなります。
3.栄養量の不足に注意する
ミキサー食などは水分を加えて調整するため、同じ量でも栄養量が少なくなる場合があります。
食べる量が少ない入居者には、栄養を補える食品を組み合わせるなど、管理栄養士が栄養量を確認しながら献立を調整することが重要です。
4.食事の観察を続け、段階を見直す
嚥下機能は、体調によって変化することがあります。
食事の場面を観察し、むせや食べ残しが増えていないか、反対に、より常食に近い段階へ移行できないかを定期的に見直すことが大切です。
嚥下食と介護報酬の関係
厚生労働省の資料によると、摂食機能障害があり誤嚥が認められる入居者に対して、多職種で食事の観察や会議を行い、口から食べ続けるための支援をした場合は、経口維持加算(I:400単位/月、II:100単位/月)の対象となる場合があります。
また、療養食加算(6単位/回、1日3回まで)では、厚生労働大臣が定める療養食に「嚥下困難者のための流動食」が含まれています。
いずれも2026年9月時点の社会保障審議会介護給付費分科会の資料で確認した内容です。
算定要件については、所管の自治体の資料で確認してください。
嚥下食の提供体制の選択肢
施設内で調理する場合
入居者一人ひとりの状態に合わせて、かたさやとろみを細かく調整しやすい点がメリットです。
一方で、段階ごとに作り分ける手間が大きく、熟練した職員が不在の日には品質がばらつきやすい点がデメリットと考えられます。
完全調理済み食品を活用する場合
あらかじめ食形態に合わせて調理された完全調理済み冷凍食品を活用すると、施設での作業は温めと盛り付けが中心になり、品質のばらつきを抑えやすくなります。
空いた時間を食事介助や観察に回せることもメリットです。
ただし、冷凍庫などの保管スペースが必要になることや、商品によって対応できる段階が異なることには注意が必要です。
導入前に試食をして、施設の基準や入居者に合うかを確認することをおすすめします。
施設種別ごとの考え方
特別養護老人ホームや介護医療院など、要介護度の高い入居者が多い施設では、嚥下食の対象者が多く、複数の段階を同時に用意する必要があります。
段階ごとの基準表と作り分けの手順を整え、厨房と介護職員で共有する体制づくりが重要です。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、対象者は少なくても、退院直後などに急な対応が必要になる場合があります。
そのため、すぐに用意できる手段を決めておくと安心です。
よくある質問
Q.嚥下食と介護食の違いは?
介護食は、噛む力や飲み込む力に配慮した食事の総称として使われることが多い言葉です。
嚥下食は、そのなかでも特に飲み込む力に配慮して調整した食事を指すと考えられます。
Q.入院先と施設で嚥下食の呼び方が違う場合は、どうすればよいですか?
病院と施設で呼び方が違う場合は、嚥下調整食分類2021のコードを共通の言葉として使う方法があります。
施設の食形態がどのコードにあたるのかを整理しておくと、入退院時の情報共有がスムーズになると考えられます。
まとめ
嚥下食とは、飲み込む力が低下した人でも安全に食べられるよう調整した食事のことで、嚥下調整食分類2021ではコード0からコード4までの段階に分けられています。
高齢者施設では、多職種の評価にもとづいて段階を決め、施設内の基準を統一し、食事の観察を続けることが大切です。
段階ごとの作り分けによる厨房の負担が大きいと感じている施設は、完全調理済み食品の活用も選択肢のひとつです。
クックデリは、高齢者施設向けに完全調理済み冷凍食品を提供しています。
資料ダウンロードや無料試食会を通じて、実際の味や食形態をぜひご確認ください。
参考文献
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」
https://www.jsdr.or.jp/doc/classification2021.html - 京都府山城南保健所 掲載資料「嚥下調整食学会分類2021関係資料」
https://www.pref.kyoto.jp/yamashiro/ho-minami/documents/gakkaibunnrui.pdf - 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料「口腔・栄養、一体的取組」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001744920.pdf





