【取材記事】楽しみながら継続できる筋トレで
オーラルフレイルを予防

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【取材記事】楽しみながら継続できる筋トレで<br>オーラルフレイルを予防
食事の前、誤嚥予防の目的から口腔体操を取り入れているご施設も少なくないでしょう。
その際、あることを意識すると、よりスムーズな飲み込みを可能にし、
オーラルフレイルも予防できるかもしれません。
地域の高齢者に楽しく取り組める嚥下トレーニングの方法を伝える
福岡先生にお話をお聞きしました。

Profile

常翔学園 広島国際大学 総合リハビリテーション学部
専攻主任・教授
  

言語聴覚士 福岡達之 さん(ふくおか・たつゆき)

2002年、名古屋文化学園医療福祉専門学校言語聴覚科卒、14年、兵庫医療大学大学院医療科学研究科摂食嚥下リハビリテーション学修士課程修了。その後、兵庫医科大学病院などを経て、16年、広島国際大学総合リハビリテーション学部リハビリテーション学科准教授。18年、兵庫医科大学大学院医学研究科高次神経制御系リハビリテーション科学博士課程修了。25年から現職。急性期、維持期、老健、訪問リハ等の言語聴覚療法を経験。

日本嚥下医学会評議員、日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員、広島県言語聴覚士会理事などを務める。

Q 〝オーラルフレイル〟とはどのような状態のことを指しますか。

オーラフレイルとは、口の機能の健康な状態、いわゆる「健口」と、口の機能低下との間にある状態のことを指します。嚥下障害まではいかないものの、歯の本数の減少や口の渇き、食べこぼしといった加齢にともなう軽微な機能の衰えが表れはじめる状態です。

上手く噛めない、飲み込めない状態が続くと、柔らかい食べ物ばかりを選んで食べるようになり、タンパク質が豊富な肉や魚を食べる機会が減ってしまいます。こうなると低栄養をはじめ全身の筋肉量が減るサルコペニア状態を引き起こしかねません。足腰が弱くなるのは自覚しやすい傾向にありますが、実はそれが口の機能低下から引き起こされている可能性もあり得るということです。

大体65歳を超えてくると機能低下は顕著になってくるため、高齢者施設に入所されている多くの高齢者がオーラルフレイルの危険性があると言えるでしょう。

一方、これらのように機能の低下は認められるものの改善も可能であるという点が、オーラルフレイルの特徴でもあります。

 

Q オーラルフレイル対象者はどのように見つければよいでしょうか。

高齢者施設では、言語聴覚士など摂食嚥下に関する専門職が配置されていない施設も少なくありません。そこで有効なのが「Swallow-5(スワローファイブ)」や「OF-5(Oral Frailty5-item Checklist)のような評価ツールです。これは「食べるのが遅くなったか」「口の渇きが気になる」といった5項目を確認するだけで、オーラルフレイルをある程度判断できるものです。

口腔の専門職であれば、舌の動きの観察や水飲みテストといった評価を行いますが、そのほかの職種であれば、まずはこれらを確認するだけでも、その後の適切な対応につなげられるはずです。





Q  どのようにオーラルフレイルを予防すれば良いでしょうか。

嚥下機能が落ちていくと、徐々に食べられなくなっていって筋力が低下し、サルコペニアの摂食嚥下障害や低栄養に陥るほか、誤嚥性肺炎も発症しやすくなります。

誤嚥性肺炎は高熱や呼吸困難などを引き起こして高齢者の全身状態を悪化させ、治療のために病院に入院せざるを得ない状況を招く恐れがあります。これはご利用者のADLのさらなる低下に拍車をかけるだけでなく、入院による施設収入も減少するため施設の経営上にも大きな痛手となります。

「パタカラ体操」をはじめとするお口の体操ももちろん良いのですが、そこに加えていただきたいのが筋力トレーニングです。当大学と東広島市が連携して実践しているオーラルフレイル対策事業において活用しているトレーニングを中心にいくつかご紹介します。

なお、トレーニングを行う際は、できるだけ息を止めずに行いましょう。また、頸椎に異常がある方や高血圧の方は、事前に医師へ相談したうえで、実施を検討してください。

1.舌の筋力トレーニング/口腔や嚥下機能の低下に対するリハビリテーション

広島大学が医療機器メーカーと共同開発した「ペコぱんだ®」は、舌と上顎の間でパンダの顔の部分を舌で押しつぶすことで、嚥下(飲み込み)に必要な舌の筋肉を鍛えられるアイテム。

▲出典/福岡達之: 舌筋への次の一手!:舌筋の筋力低下に対する筋力増強訓練. MB Med Reha 259: 1-8, 2021.

 

2.喉の筋肉を鍛えるトレーニング/嚥下おでこ体操&顎持ち上げ訓練

おでこに手を当てて抵抗を加えた状態で、おへそをのぞき込むように強く下を向く「嚥下おでこ体操」。「顎持ち上げ訓練」は、顔を正面に向けて両手の親指を顎の下に入れ、そのまま顎の下を押し上げながら顔を下に向ける。

▲出典/福岡達之: 2. 間接訓練. 倉智雅子 編, 摂食嚥下障害学, 医歯薬出版, 東京, 2025, 89-110.

 

3.喉の筋肉を鍛えるトレーニング/ボールを使ったのどトレ

ゴムボールを顎の下と胸骨の間にフィットするように挟んだまま、できるだけ強く顎を引く。


▲出典/日本放送協会(NHK):「あごの筋肉」のトリセツ.あしたが変わるトリセツショー,2024.日本放送協会(NHK):「あごの筋肉」のトリセツ.あしたが変わるトリセツショー,2024.


4.喉の筋肉を鍛えるトレーニング/拳を使ったのどトレ

片手で拳を作り、顎の真下に当てて上方向に押し上げる。拳で抵抗を加えながら顎を下方向に押し下げ、その状態を5秒ほどキープする。


▲出典/福岡達之: 特集 摂食嚥下障害と加齢/サルコペニア/低栄養 落ちてしまった「のど」の機能を改善させる訓練法. 総合リハビリテーション 50(8): 945-951, 2022.


5.嚥下機能の強化に効果的な呼気筋トレーニング



▲出典/福岡達之: 2. 間接訓練. 倉智雅子 編, 摂食嚥下障害学, 医歯薬出版, 東京, 2025, 89-110.

Q 最後にアドバイスをお願いします。

口と喉の機能というものは、使わなければ衰えてしまうため、施設のレクリエーションやイベントのなかで、うまく取り入れることをおすすめします。吹き矢や吹き戻しといったゲーム感覚で楽しめるメニューほか、カラオケ、おしゃべりが弾むようなものでもトレーニングになるため、ぜひ取り組みましょう。

――ありがとうございました。

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