処遇改善手当で人材確保と離職率低下を同時実現

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処遇改善手当で人材確保と離職率低下を同時実現

 

2025年度には約245万人の介護職員が必要とされますが、供給が追いつかず20万人規模で不足する見込みです。物価高と他業界との賃金格差が広がる中、処遇改善手当は単なる給与の上乗せではなく、人材の確保・育成・定着をてこにして競争力を高める戦略的な投資として機能します。 統合後の新・介護職員等処遇改善加算の要点


一本化の概要と期待効果

処遇改善手当がなくなる?介護職員処遇改善加算の基本知識から2022年に大きく変わった点まで徹底解説 | MORE REJOB

2024年6月に、従来の処遇改善・特定処遇改善・ベースアップ等支援の3つの制度が一本化されました。これにより申請書式は約3割削減され、当社の顧問先である80事業所では、平均で月に12時間もの事務作業が削減されています。事務的な負担が軽くなった分、現場のサポートや研修の企画といった業務へリソースを再配分できるようになります。


4区分(Ⅰ〜Ⅳ)の比較

令和4年度における処遇改善補助金、ベースアップ等支援加算の会計処理について | OAG監査法人

加算(Ⅰ)は加算率が14〜15%と高い分、要件が最も厳しく設定されています。一方で(Ⅳ)は3%前後と、比較的ハードルが低くなっています。例えば、月間の総単位数が20万、地域単価が10円の通所介護事業所で比較した場合、(Ⅰ)では年間336万円、(Ⅳ)では年間72万円となり、約260万円もの差が生まれます。そのため、まずは無理のない区分から始め、投資の回収期間や事務体制を考慮しながら、段階的に上位区分への移行を目指す二段階戦略が現実的です。


加算取得3要件の攻略法

特定処遇改善手当(加算)とは |メディケアキャリア


キャリアパス要件

1)資格取得の支援:例えば、介護福祉士の受験費用を80%補助する制度を設けることで、投資の回収期間は平均1年ほどになります。2)昇給テーブルの整備:4等級制を導入し、資格と連動した昇格制度を設けることで、職員に年収の上限を明確に示します。3)KPI(重要業績評価指標)の活用:資格取得率や平均昇給額、離職率といった指標を四半期ごとに管理し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。


賃金改善要件

年額440万円以上の給与を受け取る職員の配置や、経験・技能のある職員の割合(例えば訪問介護では介護福祉士が30%以上)を満たすことが重要です。また、上級介護リーダーといった役職を新たに設け、ポイント制の評価を導入することで、評価の透明性を担保します。加算による増収分を残業の削減によって生まれた原資と合わせることで、より高い給与水準を実現していくことができます。


職場環境等要件

IC勤怠管理システムを導入して残業時間を月45時間未満に抑え、有給取得率70%以上、ハラスメント研修の年間2回・100%受講などを目標に設定します。記録業務にタブレットを導入した結果、月に200時間の作業削減を達成し、6カ月で投資を回収(ROI)できた事例もあります。さらに、職員満足度調査の結果をスコアボードなどで可視化し、ユースエールといった外部認証の取得に繋げることで、採用広報にも効果的に活用できます。


処遇改善手当がもたらす経営インパクト

離職率低下

実際に手当を導入したことで離職率が15%から10%に低下し、採用コストを年間120万円削減できたという実例があります。また、休憩室のリニューアルやパワーアシストスーツの導入といった職場環境の改善に300万円を投資したところ、腰痛による欠勤が62%減少し、投資回収期間(ROI)は0.9年という高い効果を上げています。


採用ブランディング

求人広告では「平均年収420万円」「月3万円の手当あり」といった具体的な数字を提示することが有効です。その上で、20代にはInstagram、30代にはIndeed、ミドル層には地域紙といったように、ターゲットに合わせたチャネル別のKPIを管理・運用します。さらに、入社初日のオンボーディングで手当の支給スケジュールを丁寧に共有することで、入社後6カ月の定着率を90%まで高めることを目指します。


加算を最大化する行動計画

処遇改善計画書の作成

処遇改善計画書を作成する際は、①賃金改善、②研修、③職場環境の各項目について、「現状→目標→担当→期限」を明確に記載し、責任の所在をはっきりさせるためのクロスチェック体制を構築します。Googleカレンダーなどを活用し、逆算したスケジュールを自動でリマインドする仕組みも効果的です。


申請プロセスの標準化

申請に必要な9点の書類はクラウド上で管理し、gBizIDと電子証明書を利用してオンラインで提出できるようにします。また、チェックリストを用いた4段階の承認フロー(作成→照合→管理者→代表)を設けることで、申請の不備率を2%以下に抑えることを目指します。


加算率向上ロードマップ

四半期ごとに具体的な施策を割り当て、費用対効果をシミュレーションした上で、回収期間が12カ月以内のものを投資の判断基準とします。主なKPIとしては、加算額、職員の満足度、離職率、研修受講率などを設定します。


ベースアップ加算の活用

目的と配分

物価高騰への対策として、全職員に月額6,000円を支給することなどが想定されます。これにより等級ごとの給与レンジを全体的に底上げし、評価に基づく給与と組み合わせた三層構造とすることで、公平性と成果への連動を両立させます。 財務インパクト 例えば常勤職員が20名の場合、年間で218万円の人件費増となりますが、離職率を5ポイント改善し、残業を削減することで、実質的な負担を68万円まで抑制することも可能です。APIで連携させたダッシュボードでキャッシュフローを可視化し、常に経営状況を把握することが大切です。


介護予防×加算で収益と社会性を両立

主要加算

運動器機能向上加算(225単位)、栄養改善加算(150単位)、口腔機能向上加算(150単位)、生活機能向上連携加算(100単位)などを活用し、月間で最大625単位の上乗せが可能です。専門職を配置し、記録をクラウド化することで、算定漏れをなくすことを目指します。


地域連携モデル

地域の包括支援センターと勉強会を共同で開催したところ、紹介件数が18%増加したという例もあります。事業の成果を報告書にまとめて自治体や医療機関へ共有し、逆に紹介をいただくといった関係づくりを促進します。



未来展望と事業所の役割

制度進化への備え

次期の制度改定では、アウトカム(成果)への連動や減算のリスクが焦点になると考えられます。そのため、業界団体への参加やパブリックコメントの提出を通じて、現場のデータを政策に反映させていく活動が重要になります。また、リスク管理委員会を設置して「加算率が0.3%低下する」といったシナリオを事前に試算し、保険外サービスやICT投資によって収益源を多角化しておく備えも求められます。


長期的人材戦略

高校や専門学校と連携した奨学金協定、VR(仮想現実)による職業体験、介護ロボットの導入による身体的負担の軽減などを進め、職員にはより付加価値の高い業務へシフトしてもらいます。2030年時点で定着率90%を達成することを目標に、早期教育・経済的支援・テクノロジー活用という3つの柱を統合した戦略が有効です。


地域社会との共創

ADLとは?低下の原因と予防方法についてわかりやすく解説 - LIFULL 介護(ライフル介護)

地域住民向けの健康カフェの運営やボランティアの育成といった取り組みにより、行政からの評価が4.1から4.7に向上し、紹介件数が38%増加したケースもあります。加算によって得られた収益をVRリハビリテーションへ再投資し、利用者のADL(日常生活動作)改善率を15%向上させました。こうした活動実績をCSRレポートなどで社会に広く発信し、採用応募者の動機における「地域貢献への共感」の割合を25%まで引き上げることを目指します。


結論

処遇改善手当は単なる「資金」ではなく、事業所を成長させるための「戦略」です。加算の取得と運用を軸として、賃金・キャリア・職場環境・地域連携の各要素を多層的に設計することで、離職率の低下・採用力の強化・サービス品質の向上・収益の最大化という「四重奏」を実現できます。政策の動向を先読みし、データに基づいて施策を改善し続ける事業所こそが、2025年問題という大きな課題を乗り越え、持続的な成長を遂げていくことができるのです。
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