
経口維持加算の算定に踏み出せずにお悩みではありませんか
「経口維持加算に関心はあるけれど、要件が複雑で取り組めていない」「多職種での会議や食事の観察を続ける体制が整わない」と感じている施設長や事務長、管理栄養士の方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
経口維持加算は、飲み込む力が弱くなった入居者が口から食べ続けられるよう、多職種で支援する取り組みを評価する加算です。
本記事では、経口維持加算の目的と(I)(II)の単位数・算定要件を整理したうえで、算定までの流れと食形態対応のポイントを解説します。
なお、制度に関する内容は、2026年10月時点で確認できる厚生労働省の資料をもとにしています。
この中には、2026年9月の社会保障審議会介護給付費分科会の資料の内容も含まれます。
実際に算定する際は、最新の告示・通知と所管の自治体の資料を必ず確認してください。
経口維持加算とは
経口維持加算の目的
経口維持加算は、摂食機能障害があり誤嚥が認められる入居者に対して、多職種で経口維持計画を作成し、計画にもとづいて栄養管理を行うことを評価する介護報酬の加算です。
口から食べることは、栄養をとるだけでなく、生活の楽しみや生きる意欲にもつながると考えられています。
経口維持加算は、そうした「口から食べ続けること」を施設全体で支える取り組みを、後押しする仕組みといえます。
対象となる施設
厚生労働省の資料では、経口維持加算は、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院といった施設サービスの加算として整理されています。
経口維持加算の算定状況
厚生労働省の資料によると、令和6年(2024年)6月以降の事業所ベースの算定率は、次のとおりとされています。
介護老人福祉施設では(I)が26.0%、(II)が15.3%、介護老人保健施設では(I)が52.5%、(II)が39.4%です。
介護老人福祉施設では算定している事業所が3割に満たない状況であり、体制づくりによって取り組める余地があると考えられます。
経口維持加算(I)(II)の単位数と算定要件
経口維持加算(I)の要件
単位数は400単位/月です。
厚生労働省の資料では、摂食機能障害を有し、誤嚥が認められる入居者ごとに、多職種で経口維持計画を作成し、計画に従った栄養管理を管理栄養士などが実施することが要件として示されています。
関わる職種としては、医師、歯科医師、管理栄養士、看護職員、介護支援専門員などが挙げられています。
経口維持加算(II)の要件
単位数は100単位/月です。
厚生労働省の資料では、協力歯科医療機関を定めていることが要件として示されています。
このほか、食事の観察や会議などに参加する職種の要件も定められているため、詳細は告示・通知で確認してください。
令和3年度(2021年度)改定での変更点
令和3年度(2021年度)の介護報酬改定では、継続的な経口維持の取り組みを進める観点から、経口維持加算の算定期間の要件が廃止されました。
この要件は、「原則6月」とされていたものです。
これにより、計画にもとづく支援を長期的に続けやすくなったと考えられます。
経口維持加算の算定までの流れ
1.対象となる入居者を把握する
食事中のむせや食べる量の減少、飲み込みに時間がかかるなどの様子から、摂食機能障害や誤嚥が疑われる入居者を把握します。
日々の喫食率の記録や介護職員の気づきが、対象者を見つける手がかりになります。
2.多職種で食事の観察と会議を行う
医師、歯科医師、管理栄養士、看護職員、介護支援専門員などが共同して食事の場面を観察し、会議で課題と支援の方針を話し合います。
栄養マネジメント強化加算を算定している施設では、経口維持加算の食事の観察を兼ねてもよいとされています。
3.経口維持計画を作成する
観察と会議の内容をもとに、入居者ごとに経口維持計画を作成します。
食形態、とろみの段階、食事の姿勢や介助方法など、具体的な支援内容を計画に盛り込むことが大切です。
入居者や家族にも計画の内容をわかりやすく伝えておくと、支援への理解を得やすくなります。
4.計画にもとづいて栄養管理を行い、見直す
計画に沿って管理栄養士などが栄養管理を行い、食事の観察を続けながら、状態の変化に合わせて計画を見直します。
食形態対応のポイント
嚥下調整食分類2021にもとづいて食形態を整理する
経口維持加算の取り組みでは、入居者の状態に合った食形態を安定して提供できることが前提になります。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」のコードと、施設のソフト食やミキサー食などとの対応を整理しておきましょう。
そうすることで、多職種での話し合いや病院との情報共有がしやすくなります。
とろみの段階を統一する
学会分類2021では、とろみを「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分けています。
施設内で使うとろみ調整食品と分量をそろえ、誰が作っても同じ段階になるようにしておくことが大切です。
食事の観察の結果を食形態に反映する
食事の観察で気づいたむせや食べ残しの傾向を、食形態の変更や献立の調整にすぐ反映できる体制が重要です。
厨房と介護職員、管理栄養士の連携が、取り組みの質を左右すると考えられます。
経口維持加算に取り組む体制づくりの選択肢
施設内ですべて調理する場合
入居者一人ひとりに合わせて、食形態を細かく調整しやすい点がメリットです。
一方で、食形態ごとの作り分けに多くの手間がかかり、厨房の職員が食事の観察や会議に参加する時間を確保しにくい点がデメリットと考えられます。
完全調理済み食品を活用する場合
完全調理済み冷凍食品を活用すると、施設での作業は温めと盛り付けが中心になり、食形態ごとの仕上がりのばらつきを抑えやすくなります。
空いた時間を食事の観察や多職種での会議、食事介助に回せることも、メリットのひとつといえます。
ただし、冷凍庫などの保管スペースが必要になることや、献立の自由度が下がる場合があることには注意が必要です。
導入前に試食をして、施設の食形態の基準や入居者に合うかどうかを確認することをおすすめします。
よくある質問
Q.栄養マネジメント強化加算と同時に算定できますか?
厚生労働省の令和3年度(2021年度)改定の資料では、栄養マネジメント強化加算の食事の観察について、経口維持加算を算定している場合は、その食事の観察を兼ねてもよいとされています。
あわせて算定する場合の細かな要件は、告示・通知と所管の自治体の資料で確認してください。
Q.有料老人ホームでも算定できますか?
厚生労働省の資料では、経口維持加算は、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、介護医療院などの施設サービスの加算として整理されています。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で算定できるかどうかは、提供しているサービスの種類によって異なります。
所管の自治体に確認してください。
まとめ
経口維持加算とは、摂食機能障害があり誤嚥が認められる入居者に対して、多職種で経口維持計画を作成し、計画にもとづいて栄養管理を行うことを評価する加算です。
単位数は(I)が400単位/月、(II)が100単位/月で、令和3年度(2021年度)改定では、原則6月の算定期間の要件が廃止されました。
算定に向けては、多職種での食事の観察と会議に加え、学会分類にもとづく食形態の整理など、食事を安定して提供できる体制づくりが欠かせません。
厨房の負担が大きく、観察や会議に時間を割けないと感じている施設は、完全調理済み食品の活用も選択肢のひとつです。
クックデリは、高齢者施設向けに完全調理済み冷凍食品を提供しています。
資料ダウンロードや無料試食会を通じて、実際の味や食形態をぜひご確認ください。
参考文献
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(2026年9月3日)資料「口腔・栄養、一体的取組」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001744920.pdf - 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第224回、令和5年9月15日)資料「口腔・栄養」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001163105.pdf - 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定 施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメントの充実」(全国老人保健施設協会 掲載資料)
https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/8e4da1ef4cd163267652bb8f049f7036.pdf - 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」
https://www.jsdr.or.jp/doc/classification2021.html






