【取材記事】ポイントは〝喉の奥が使えるか〟
介護施設の多職種で取り組む食支援

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【取材記事】ポイントは〝喉の奥が使えるか〟<br> 介護施設の多職種で取り組む食支援
介護施設のご利用者の課題として多く指摘される低栄養や誤嚥性肺炎―—。
これらは摂食嚥下と深くかかわります。
摂食嚥下を理解して多職種でアプローチを図り、適切な対策を講じることで
ご利用者の健康を守りましょう。

Profile

富山県リハビリテーション病院・こども支援センター
一般社団法人富山県言語聴覚士会 会長
  

言語聴覚士 亀谷 浩史さん

私立系の四年制大学卒業後、入社した一般企業の新規事業として発足した嚥下食販売部門の営業担当に着任。この経験が言語聴覚士という仕事への興味につながり、2007年、資格を取得。同年、富山医療生活協同組合富山協立病院に入職、17年、富山県リハビリテーション病院・こども支援センターに入職、24年、リハビリテーション療法部・言語聴覚科科長に就任、現在に至る。

【所属団体等】一般社団法人富山県言語聴覚士会 会長/一般社団法人日本言語聴覚士協会 介護保険部員/一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団 制度化班/富山県リハビリテーション専門職団体協議会 会長・副会長など多数。

【所属学会等】一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士/日本栄養治療学会学術評議員 栄養治療専門療法士(摂食嚥下専門療法士) など

摂食嚥下について教えてください。

食べ物を認識して、口に入れ、噛んで、飲み込み、胃まで送る一連の働きのことを指します。

このプロセスを5つの段階に分けて整理した代表的な考え方が、「摂食嚥下の5期モデル」と呼ばれるものです。

 

介護施設においてご利用者の摂食嚥下についてどう考えれば良いでしょうか。

介護施設で受け入れている高齢者の嚥下状態は、大きく分けると、①嚥下障害がほとんどない方、②全身機能も含めて低下傾向にある方、③もともと障がいのある方――の3つに分かれると言えます。

嚥下障害がほとんどない方も、将来的には予防的なアプローチは必要になりますが、まずは注視いただきたいのは②③の方です。

②の全身状態も含めて低下傾向にある方というのは、いわゆるフレイルやサルコペニアとも呼ばれます。脳梗塞や脳出血といった決定的な疾患は見られないものの、嚥下障害が顕在化している可能性があるため、運動や栄養の介入が必要となります。

③のようなもともと嚥下障害がある方については、入院中に食事姿勢や食事形態の調整など何らかの介入がされていたケースが多くあります。適切な介入であれば問題はないものの、そうでないケースも少なくありません。そのため、やはり施設でも嚥下機能の評価は不可欠となります。

Q 嚥下機能評価ができる環境が整っている介護施設は、多くはありません……。

ほとんどの施設では言語聴覚士をはじめとする摂食嚥下の専門職配置はないですし、検査機器の用意がある施設も少ないのが現状です。ただしその代わり、介護職や管理栄養士、理学療法士といった多職種が配置されていることから、多職種の視点を最大限活用することが求められます。

その際にぜひ役立ていただきたいのが、先ほどの「摂食嚥下の5期モデル」をベースにした、嚥下障害の原因と考えられる8つの現象から能力を推定し、適切な対応につなげていく考え方です。多職種で取り組むことにより、情報の漏れや偏りが抑えられます。

これによってまずは喉の奥が正しく使えて、安全に食べられるかどうかを見定めたうえで、適切な食形態を選ぶ必要があるというのが私の考え方です。

©亀谷 浩史氏「能力を推定する際の考え方」をもとに作成

 

Q 嚥下機能の低下が招くリスクについて教えてください。

嚥下機能が落ちていくと、徐々に食べられなくなっていって筋力が低下し、サルコペニアの摂食嚥下障害や低栄養に陥るほか、誤嚥性肺炎も発症しやすくなります。

誤嚥性肺炎は高熱や呼吸困難などを引き起こして高齢者の全身状態を悪化させ、治療のために病院に入院せざるを得ない状況を招く恐れがあります。これはご利用者のADLのさらなる低下に拍車をかけるだけでなく、入院による施設収入も減少するため施設の経営上にも大きな痛手となります。

 

 誤嚥性肺炎はどのように予防できますか。

こちらにおいても、まずは考えられるリスクが食べ物によるものなのか、それ以外のものなのかを見極める必要があります。食べ物が要因になっている場合は、目の前でムセたり、食後に熱が出るなど比較的症状がわかりやすいため、食形態や食事姿勢の迅速な見直しに取りかかりましょう。食形態においては、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」を共通言語に用い、多職種間で検討することが望ましいです。

一方、食事姿勢においては、咽頭への対応能力が高い「完全側臥位法」を取り入れるのも一つの手です。まだまだ介護施設で取り入れているところは少ないものの、ムセにくく安全に食べられる方法としておすすめします。

問題は「それ以外」の原因なのですが、その一つが唾液によるもので、就寝中の唾液誤嚥が最も多いといわれています。唾液が完全に誤嚥しないようにするのは非常に難しいため、さしあたって唾液の質を変える取り組みに力を入れてみてはいかがでしょうか。

完全側臥位法とは

口から食べ続けるために、体を真横にした状態で食事をとる方法。重力によって、食べたものを喉横のスペース(咽頭側壁)に溜めることができ、誤って気管に流れ込むのを防ぐ効果が期待できます。

 

 「唾液の質を変える」とはどのようなことでしょうか。

唾液の中には、細菌やウイルスから体を守る抗体、IgA(免疫グロブリンA)が含まれています。この濃度を高めるため、口腔ケアと並行し、適度な運動や栄養摂取で免疫力を上げることが有効です。

介護施設が行っているレクリエーションなんかは、絶好の活動の一つになりますし、食事前の嚥下体操にも効果があります。そのとき少し意識していただきたいのは、嚥下機能の改善に期待できる喉ぼとけの上に位置する「舌骨上筋群」を鍛えるトレーニングを取り入れること。できる限り、継続して取り組むことが大切です。

――ありがとうございました。

亀谷さんが考える!🍳退院後の食形態のポイント🍳

病院を退院して施設に入所する際に直面するのが、受け入れる施設で用意されている食形態と合致しないといった問題です。

たとえば学会分類「コード」を調整して食べている患者さんがいたとして、退院先の施設が「コード4」を調整した食形態を持っていない場合は、その方の嚥下能力より低い「コード」か、能力より高い「コードなし」選択をせざるを得ないことがあります。結果的に、「コード」を選択する場合が比較的多いのが現状です。

その点、クックデリのソフト食は、完調品では希少な学会分類「コード3」に該当しているため、舌での押し潰しが可能なご利用者にとって適した食形態になると思います。先ほどの施設入所の例の場合も、丸飲みの「コード」ではなく押し潰し対応の「コード」相当の食事を摂取できるため、能力低下を来たしにくくなるのではないでしょうか。また、低栄養への対応としても、少量・高栄養な特徴も評価できるポイントです。

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