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加齢とともに、食べる力は誰でも少しずつ弱くなっていくものです。それでも、食事は日々の楽しみであり、健康を支える大切な時間でもあります。
この記事では、そうした悩みを抱える介護従事者に向けて、安全でおいしい介護食を、安心して用意できるようになるための情報をまとめます。「常食」「軟菜食」「きざみ食」「ミキサー食」など、さまざまな食事形態について、具体的な作り方、調理の注意点、市販品の選び方まで、図や一覧表を使って分かりやすく解説します。この記事が、利用者の「食べる喜び」を支え、介護従事者の負担を少しでも減らす手助けになれば幸いです。
なぜ食事形態の調整が必要?介護食・嚥下食の基本

食事形態の調整は、単に食べ物の形を変えるだけではなく、利用者の安全と栄養を守り、そして何より「食べる喜び」を保つために欠かせません。加齢とともに、私たちの体は少しずつ変化します。特に「噛む力(咀嚼機能)」や「飲み込む力(嚥下機能)」が低下すると、食べ物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥」や、喉に詰まってしまう「窒息」のリスクが高まります。
さらに、食べにくい食事が続くと食欲が落ち、必要な栄養が摂れず「低栄養」に陥る危険も出てきます。こうした問題を防ぎ、安全に、そしておいしく食事を続けられるようにするために、食事形態の調整はとても重要です。
食べる力(咀嚼・嚥下機能)と食事形態の関係
「食べる力」は、大きく「噛む力(咀嚼機能)」と「飲み込む力(嚥下機能)」で成り立っており、どちらかが弱まると、食事の安全性や食べやすさに影響が出てきます。
咀嚼機能とは、歯や顎で食べ物を細かく噛み砕き、唾液と混ぜて食塊(飲み込みやすい塊)を作る力のことです。一方、嚥下機能とは、口の中で作られた食塊を、喉を通して食道へ送る動き全体を指します。特に、お茶や汁物のようなサラサラした水分でむせやすい場合は、嚥下機能の低下が疑われます。
【図解】利用者の場合はどれ?食事形態の選び方マップ
ご家族の「食べる力」に合った食事形態を選ぶ目安となるフローチャートをご紹介します。以下の質問に「はい」か「いいえ」で答えながら進めてみましょう。
- 硬いものが食べられますか?(例:せんべい、ごぼう、肉など)
- 「はい」の場合:常食
- 「いいえ」の場合:次の質問へ
- 歯茎や舌でつぶせる程度の硬さのものが食べられますか?(例:卵焼き、煮込んだ大根、豆腐など)
- 「はい」の場合:軟菜食
- 「いいえ」の場合:次の質問へ
- 口の中で食べ物をまとめることができますか?
- 「はい」の場合:きざみ食 または ソフト食
- 「いいえ」の場合:次の質問へ
- 食事中に水分でむせることがよくありますか?
- 「はい」の場合:ミキサー食+とろみ、ゼリー食
- 「いいえ」の場合:ミキサー食
【一覧で解説】食事形態7つの種類と特徴
| 食事形態の名称 | 主な対象者 | 食べ物の硬さの目安 | 主な調理方法 |
|---|---|---|---|
| 常食(普通食) | 健康な方 | 制限なし | 一般的な調理 |
| 軟菜食(やわらか食) | 噛む力が少し低下した方、胃腸の弱い方 | 歯茎や舌でつぶせる硬さ | 長く煮込む、蒸す |
| きざみ食・極きざみ食 | 咀嚼機能が低下したが、飲み込む力はある方 | 5mm〜1cm程度に刻む | 食材を細かく刻む |
| ソフト食 | 噛む力・飲み込む力が低下したが、見た目を保ちたい方 | 舌でつぶせる硬さ | 一度ミキサーにかけ、固形化剤で成形 |
| ミキサー食(ペースト食) | 噛む力・飲み込む力が著しく低下した方 | ポタージュ状、ペースト状 | ミキサーにかける、とろみをつける |
| ゼリー食(ムース食) | 飲み込む力が低下し、誤嚥リスクがある方 | ゼリー状、ムース状 | ゲル化剤で固める |
| 流動食 | 噛むことも飲み込むことも困難な方、消化器疾患の術後の方 | 液体状 | ミキサー、ブレンダーなどで液状に |

1. 常食(普通食)
常食(普通食)とは、健康な方が日常的に食べている一般的な食事のことです。高齢者の場合、常食を食べられていても、栄養の偏りには注意が必要です。
2. 軟菜食(やわらか食)
軟菜食は「やわらか食」とも呼ばれ、歯茎や舌でつぶせるくらいのやわらかさに調理した食事形態です。白身魚、豆腐、卵、鶏ひき肉、かぼちゃなどが向いています。一方で、繊維の多い根菜やタコ、イカなどは避けるか工夫が必要です。
3. きざみ食・極きざみ食
食材を5mm〜1cm程度に刻んで提供します。咀嚼負担を減らすのが目的ですが、注意点もあります。
調理のポイントと注意点(誤嚥リスク)
きざみ食は口の中でばらけやすく、喉に張り付いたり気管に入りやすくなったりします。市販の「とろみ調整食品」やあんかけを使い、全体をまとめる工夫が不可欠です。
4. ソフト食
「舌でつぶせる硬さ」でありながら、食材の形をできるだけ保つ介護食です。見た目が常食に近いため、食欲を保ちやすいメリットがあります。
調理のポイントと見た目を良くする工夫
ミキサーでペースト状にした食材に「固形化剤(ゲル化剤)」を加えて成形します。彩りや盛り付けにこだわることで、食べる意欲を引き出します。
5. ミキサー食(ペースト食)
食材をミキサーにかけポタージュ状にしたものです。著しく機能が低下した方に適していますが、「とろみ」を適切につけることが重要です。
調理のポイントと注意点(栄養価・見た目)
水分を入れすぎると栄養密度が下がるため、出汁や牛乳を活用します。また、すべてを一緒に混ぜず、食材ごとにミキサーにかけることで色や風味を残します。
6. ゼリー食(ムース食)
口の中でまとまりやすく、つるんとした食感で喉を通りやすいため、安全性が高いのが特徴です。
調理のポイントと固形剤の選び方
ゼラチンは体温で溶けて誤嚥を招く可能性があるため、嚥下障害がある場合は体温で溶けにくい嚥下食用のゲル化剤を選ぶほうが安心です。
7. 流動食
スープや重湯などの液体状の食事です。経口だけでなく経管栄養も含まれます。
種類(濃厚流動食など)と注意点
市販の濃厚流動食は手軽に高カロリーを補えますが、下痢などの消化器症状が出ることがあるため、少量から始めましょう。
食事形態を選ぶ際の公的な目安
市販品選びの参考に「ユニバーサルデザインフード(UDF)」

日本介護食品協議会が定めた規格です。パッケージのUDFマークを確認しましょう。
- 「容易にかめる」:普通食に近いが少し調整したもの
- 「歯ぐきでつぶせる」:卵焼きや大根の煮物など
- 「舌でつぶせる」:プリンやマッシュポテトなど
- 「かまなくてよい」:なめらかなペースト状
飲み込みやすさも分かる「スマイルケア食」
農林水産省が推進する分類です。青マーク(咀嚼配慮)、黄マーク(嚥下配慮)、赤マーク(高度な嚥下配慮)の3種類を参考にします。
専門家が使う基準「嚥下調整食学会分類」「嚥下食ピラミッド」とは
医療・介護現場では、物性を段階化した「学会分類2021」などがガイドラインとして使われています。
安全で美味しい介護食にするための調理のコツ
誤嚥を防ぐ「とろみ」の付け方と注意点
とろみは喉へ流れ込むスピードをゆるやかにします。ダマにならないようによく混ぜ、製品ごとの特徴を確認しましょう。
見た目も楽しむための盛り付け・彩りの工夫
食材ごとに調理し、シリコン型や彩りのよいソースを使うことで、食欲を刺激します。
栄養価を落とさない調理法と栄養補助食品の活用
煮汁を捨てずに活用し、足りない分は市販の栄養補助食品(高カロリーゼリー等)で補うことも一つの手です。
【お悩み別】食事形態に関するQ&A
Q1. 人手の少ないなかでの調理が大変です。楽にする方法は?
市販の介護食(レトルトや冷凍弁当)を積極的に取り入れましょう。全部手作りでなければ、という考えから離れることも大切です。
Q2. 食材を刻んだりミキサーにかけたりすると、食べてくれません
好みの味付け(出汁を効かせる等)にしたり、見た目を整えるソフト食を試したり、理由を丁寧に伝えることで安心感につなげます。
Q3. どの食事形態にすれば良いか、判断が難しいです。
主治医、歯科医師、管理栄養士、言語聴覚士(ST)、ケアマネジャーなどの専門家に相談しましょう。普段の様子をメモしておくとスムーズです。
まとめ:利用者に合った食事形態で「食べる喜び」を支えよう
食事形態の調整は、安全面だけでなく「尊厳」を守る取り組みでもあります。この記事で紹介した知識や市販品の目安を活用し、ご利用者が食卓を笑顔で囲む時間を取り戻すきっかけにしてください。この記事が、ご本人らしい「食べる喜び」を支える一助になれば幸いです。


